【Fabric Ventures記事要約】ユーティリティトークンは、ペイメントトークンを超える

ファンドレポート Fabric Ventures

【Fabric Ventures記事要約】ユーティリティトークンは、ペイメントトークンを超える

更新日 2019/11/27

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目次
  1. 1. トークンの分類について
  2. 2. ペイメントトークンは代替される
  3. 3. ユーティリティトークンを保持する目的
  4. 4. MV=PQの批判
  5. 5. ワークトークンについての考察
  6. 6. まとめ

この記事は、Fabric VenturesのMax Mersch氏の記事、“An (Entrepreneurial) Investor’s Take on the Utility of Tokens beyond Payment”を和訳、要約したものです。

論点を整理するために、話の順序は前後しています。本記事の翻訳にあたって、許可をいただいたMax Mersch氏とFabric Venturesに感謝致します。

Fabric Ventures ユーティリティトークンは、ペイメントトークンを超える 概要

トークンの分類について

cryptoassetの特性を分類すると、以下のようになります。

トークンの分類について

通貨、コモディティ

支払い手段と価値保存(SoV)として機能するトークンです。
将来的には、BTC、ETH、ZEC、XMR、stable coinなどに収束していき、他にもいくつかの通貨が現れると予測されます。

ユーティリティトークン

ユーティリティトークンは、ネットワーク内の関係者を調整する役割があります。
ユーティリティトークンの分類としては、ガバナンストークン、ディスカウントトークン、ワークトークン、バーンアンドミント均衡トークンがあります。
ワークトークンの仕組みについては後述しています。

セキュリティトークン

セキュリティトークンは、原資産へアクセスできる価値、流動性、分割可能性を表しています。
これにより、巨大な資産価値の流動性が開放されます。

トークンの分類についての詳細は、こちらの記事にまとめました。

ペイメントトークンは代替される

現在、多くのトークンは、単にネットワークのペイメントトークンとして使われています。しかし、長期的にはこれらは価値がなくなっていくでしょう。

ネットワーク内の支払い手段は、ネイティブトークンの代わりにstablecoinやSoVトークンが使われるようになるでしょう。
将来的にはstablecoinやSoVトークンへ摩擦なくバックグラウンドでスワップできるようになります。

詳しくは、John Pfeffer氏こちらの論文を読むことがおすすめです。
大部分のペイメントトークンは時間の経過とともに価値が増加しないと主張しています。

ユーティリティトークンを保持する目的

ユーティリティトークンという言葉は誤用されることが多いです。
証券規制から逃れるために、セキュリティトークンではないものという使われ方をしますが、これは正確ではありません。
ユーティリティトークンの重要な役割は、デジタルリソースの所有権を表し、ネットワークの参加者を調整することです。

このネットワークの参加者は、キーパーと表現されています。
キーパーは、ネットワークに保護し、価値を与え、円滑にするなどの役割があります。
具体的には、マイナーやガバナンスの役割などがキーパーにあたります。
キーパーという考え方についての詳しい英語記事はこちらになります。

MV=PQの批判

フィッシャーの交換方程式(MV=PQ)の問題点

トークン価値を評価するために、経済学の法則であるフィッシャーの交換方程式(MV=PQ)が使われます。このフィッシャーの交換方程式は、Chris Burniske氏Cryptoasset Valuationsで提唱しています。


しかし、この理論をCrypto assetに適用するのは以下の点から適切ではありません。特に、Velocity(流通速度)の扱いに問題があります。

Velocityの因果関係

経済学の歴史をみると、方程式の重要な変数はPQとMです。
方程式のV(Velocity)は、方程式を機能させるための乗数として計算されていました。
実用的には、V(Velocity)は式の結果なので、経済の生産高(PQ)とバリエーション(M)を掛けた結果が等しくなるように何度も計算し直す必要があります。

需要と供給の均衡が前提

経済学上の方程式であるため、完全情報の市場行動を前提としており、支払手段の需要と供給が均衡をもたらすと仮定しています。
しかし、現実にその状態であることは非常に稀です。

投機的取引を含んでいる

かなりの数の取引は、ネットワークのデジタルリソースの価値の交換ではなく、投機目的の取引です。それは、GDPの測定基準からは除外されます。
Vを考えるときこれらのトランザクションは除外されるべきです。

Velocityの集合値

Velocityの集合は、Cryptoassetのさまざまなユースケースの加重平均です。
例えば、1トークンあたりにもホールドやステークしているVelocityとトランザクションのVelocityがあります。
結果として、大部分のトークンが投資やヘッジのために使われている場合、取引のVelocityが増すほど、Velocityの集合は低下します。

持分割合の偏り

経済学の貨幣数量説は、持分割合が分散していることを前提としています。この状態は、クリプトエコノミクスの初期段階のような分散型ネットワークではほとんど見られません。
一部の人が多くの割合を保有している場合、この方程式の作用は限定的です。
実際には、アクティブなトークンの割合を加味する必要があります。

ワークトークンについての考察

ワークトークン(work token)についての考察

ユーティリティトークンは、Fabric Venturesのメインの投資テーマです。

特に、ユーティリティトークンの実例として、ここではワークトークンを見ていきます。

ワークトークンとは

ワークトークンとは、ネットワーク内のサービス提供者とユーザーのバランスを調整するためのトークンです。
サービス提供者がインセンティブを得るために自己資金投資(ステーキング)をする必要があるという設計に基づいています。

サービス提供者は、計算リソースや定量評価などの収益性の高い仕事をする権利と引き換えに一定量のトークンをステークする義務があります。
仕事が完了するとサービス提供者はユーザーから報酬を受け取ります。
ネットワークの利用が拡大するほど、仕事の収益性は増し、サービス提供者の増加につながります。
その結果、ワークトークンの需要が増加し、供給量が固定されているため、ネットワークの利用とともにトークン価格が上昇します。

a)Velocity(流通速度)を低く保つ

ワークトークンは"ライセンス"として機能します。
ネットワークのサービスを使うためには、トークンを取得またはステークしなければなりません。また、ワークトークンの保有者には、将来価値を得る権利があります。

ワークトークンは、ネットワークを活性化させるユーザーや管理者が所有します。彼らは、ネットワークへの参加を望んでいる限り、ステークし、ホールドします。
ホールド、ステークされているトークンのVelocityはトランザクションのVelocityより低くなるはずです。

b) ホールドするインセンティブ

ペイメントトークンは、SoVやstable coin へのすぐに切り替えても問題ないですが、ワークトークンでインセンティブを得るためには、継続的にステーク、ホールドする必要があります。

さらに、ステークし続けるメリットが大きいです。例えば、ネットワーク内のレピュテーションやクレジットスコアが上がります。
ネットワークキーパーは、長期ホールドする強い動機があります。

c) トークンの必要性

ネイティブトークンが支払いとしての機能のみであれば、フォークやスワップが可能になり、トークンが必要なくなるのではないかという議論があります。
これは、ネットワーク効果とセキュリティの観点から間違っています。

ワークトークンにおいて最も重要なのは、チーム、コミュニティ、ブランドによるネットワーク効果です。
アクティブユーザーやネットワークキーパーから見ると、フォークはエコシステムの統合、開発の更新などの問題があり、得策ではありません。
アーリーアダプターや開発チームの保有者は、簡単に手放さないかわりにシステムの新機能を構築し続けます。 

また、ワークトークンは、ネットワークのセキュリティの調整手段として重要です。
ステークやホールドによって需要が増え、希少性が増すことにより、流動性をコントロールし、51%の攻撃のために必要なコストを高めます。
たとえば、BitcoinマイナーがBitcoinを攻撃するとASICにロックアップしているコストが大きな損失になります。
同様に、ネットワークのキーパーが、ネットワークを攻撃すると、彼らがロックアップしているステークトークンにコストのコストがかなりの損失になります。

ネイティブトークンは、トラストレスな方法でアクターを調整し、ネットワークを保護するために必要です。

d)評価メカニズム

MV=PQでは、通貨の役割( 価値の尺度 (Unit of account)、交換手段 (Medium of exchange)、価値貯蔵手段 (Store of Value) )としての価値を測ろうとしています。
しかし、ワークトークンは通貨の特性はないため、MV = PQの適用は、誤っています。

ワークトークンは、ネットワーク内の将来予測キャッシュフローに基づいて評価されるべきです。これは、Discounted Cash Flow (DCF法)で計算できます。

DCF法を使う場合、マイニング報酬やサービスの支払いなどキーパーのすべての将来予測キャッシュフローを計算します。
サービスレートを一定と仮定すると、ネットワークの利用に比例して増加します。

平均評価は、キーパーのキャッシュフローの正味現在価値になります。
それは、ステークされた資本のコストと内部収益率のしきい値のランニングコストをわずかに上回ります。

まとめ

今後はシンプルなペイメントトークンと複雑なクリプトエコノミクスの設計を区別するようにすすめたいです。

将来、ネットワーク内でネイティブトークは支払いに使用されなくなると予想します。支払手段は、stable coinやSoVトークンに代わります。

ネットワークの評価にMV=PQを使うのは間違っています。
代わりに、参加するユーザーとネットワークキーパーのインセンティブ調整に注目するべきです。それは、DCF法などのキャッシュフローで評価できます。